ユニーチャームとリサイクル率8年連続No.1の鹿児島県志布志市が「オゾンを利用して、使用済のおむつを再資源化する技術の実証実験を開始する協定」を締結しました

ユニーチャームとリサイクル率8年連続No.1の鹿児島県志布志市

紙おむつや生理用品の大手、ユニ・チャームは、連結の売上高が7,000億円を超える、日本を代表する企業の一社です。上場企業ですが、創業家の高原家の資産管理会社が、多くの株式を保有しているため、同族企業としても有名です(なお、同族企業と、そうでない企業を比較したところ、同族企業の方が売上、利益ともに良い成果を出していたという研究があります。同族企業=古い体質、と考えること自体が古い、といってよいでしょう)。

2016年12月に、ユニ・チャームと、鹿児島県志布志市が「オゾンを利用して、使用済のおむつを再資源化する技術の実証実験を開始する協定」を締結しました。この業界に詳しくない方は、「なぜユニ・チャーム」「なぜ志布志市」そして「なぜ再資源化でオゾン」なのか、疑問に思う点が多いと思いますので、以下でご説明します。

まず、このニュースはユニ・チャームの問題意識と技術力があっての話です。紙おむつメーカーの大手の一角として、大量に消費・廃棄される紙おむつについて問題意識を抱えていたことが大きいでしょう。業界の中でも規模が小さい企業は、どうしても、大手企業に追いつくことを目指して経営されていますが、大手企業は既に売り上げも利益も十分出しているケースが多いです。そうなると、紙おむつ業界、紙おむつというビジネスについての未来を考える機会、いや責任感が生じます(どの業界でも、新しいことを一番多く言い出しているのは、業界トップ企業です)。だからこそ、紙おむつの再資源化技術を開発することに投資をしたのだと推察します。

このユニ・チャームが、鹿児島県志布志市と手を組んだのはベストカップルです。志布志市は、ごみのリサイクル率が8年連続でNo.1になっているリサイクル都市だからです。ごみのリサイクルを行うには、どうしても一人ひとりの住民の協力が必要になります。いくら企業と地方自治体のトップが手を組んでも、住民に協力してもらえなければ、絵に描いた餅で終わってしまうのです。

志布志市の住民は、ごみのリサイクル率がNo.1になったことからわかる通り、リサイクルに対して高い意識を持って長期間取り組んでいるため、新しいリサイクルを開始する時に受け入れられる土壌があります。つまり、実験が成功する可能性が高い自治体だと見越したから、ユニ・チャームは志布志市を選んだのでしょう。

再資源化とオゾンについて

再資源化とオゾンについて

3R

皆さんは「3R」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。Reduce, Reuse, Recycleの頭文字を取った言葉が「3R」です。

紙おむつを例にとって考えてみましょう。

まず、使い捨て紙おむつという性質上、レデュースという方法はありません。紙おむつは使い捨てであるが故に、使う人にとって手軽で快適だからです。「紙おむつ自体に使われる紙の量を減らす」という意味での技術開発はありますが、ごみ自体を減らすことは不可能です。

次にリユースですが、これもまず無理な方法です。一度使った紙おむつを再度利用する、というのは、排せつ物がついたままの紙おむつを使うということで、とても現実的ではありません。付着した尿や便から感染症にかかる恐れもあります。

よって、紙おむつについては、リサイクルしか方法はありません。すなわち、紙おむつを「リサイクルごみ」として回収した後で、処理を加えて、古紙として別の形で再利用する方法です。ただ、リサイクルといっても、非常にハードルが高いです。特に、紙おむつについた尿や便には多くの雑菌やウイルスが含まれている可能性が高く、これが再利用に回されたときに、害をまき散らすことになるからです。このため、紙おむつの再資源化は、夢物語として現実的に取り組まれていなかったのです。

そこで注目されたのはオゾンです。

オゾン(O3)は、気体として、また液体として(水に溶かしたオゾン水)として、脱臭・消臭に、そして殺菌・消毒用として利用されています。オゾンは、不安定な物資であるため、別の物質とくっついて、安定した物質である酸素 (O2) に変わろうとする性質があります。この、「他の物質とくっつくタイミング」のときに、脱臭・消臭効果と、殺菌消毒効果が起こります。

不安定な物質であるということは、別のメリットもあります。つまり、オゾンを放置しておくと、勝手に酸素に変わってくれるため、オゾンが全く残留しない、すなわち安全性が高いのです。これは、塩素などの薬剤と最も大きく異なる点です。

オゾンは私たちが目に見えない形で、生活を支えている物質です。

  • 私たちが日々飲んでいる水道水は、浄水工程でオゾンにより殺菌・脱臭された水です。
  • 食品を長持ちさせるために、食品添加物としてオゾンが利用されています。また、大規模な食品工場では、食品をオゾン水で洗うことで雑菌やウイルスを殺菌して、食品を安全に長持ちされています。
  • オゾン水の散布は農業でも使われています。畑の雑菌を殺菌するためにも利用されています。農薬と異なり、オゾンは時間が経つと自然分解されるため、残留農薬のような危険性がありません。
  • インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルスなど、人体に害をもたらすウイルスの除菌用として、ご家庭や幼稚園・保育園、ホテルなどでも利用されています。風邪の原因もウイルスなので、風邪対策にも効果があります。

次に、オゾンが紙おむつリサイクルの、どの場面で利用されているかについて、見てみましょう。

回収した紙おむつは、まず低質パルプとプラスチックに分けられます。プラスチックは固形燃料(RPF)として別に利用されますが、低質パルプは雑菌が付着したままですので、そのまま再利用には回せませんでした(そのまま再利用できないが故に、低質パルプと呼ばれています)。

そこで、低質パルプは「ユニ・チャーム独自のオゾン処理」を行います。オゾン処理の詳細は、ユニ・チャームの企業秘密なので明らかにされていませんが、気体としてのオゾンか、液体としてのオゾン(オゾン水)か、いずれかを利用した処理で、もともと使用済紙おむつだった低質パルプから、雑菌やウイルスを完全に除去しています。

このオゾン処理工程を経ると、そのままでは利用できない低質パルプは、再生利用できる上質パルプとなり、再び紙おむつ用の部材として利用されることになります。不可能を可能にしたのは、ユニ・チャームの技術者の並々ならぬ努力はもちろんですが、オゾンの強い殺菌力、脱臭力という優れた性質があってこそなのです。